診察で心音を聞くために当たり前のように使われる聴診器ですが、19世紀にこの聴診器が考案されるまでは、医師が直接患者の胸に耳を当てて聴診していたのです。
1816年、フランス人の医師ルネ・ラエンネック(ラエネク)が心臓の悪い若い女性患者を聴診する際に、年頃の自分も女性患者もお互いとても恥ずかしかったため、他の方法で聴診できないかと考えました。
当時の「木材信号」というオモチャで遊んでいる子どもたちを見て、聴診器のヒントを得たといいます。
このオモチャは、中が空洞の長い木の棒です。棒の両端に立って、片方が棒の端をピンで引っかいたり擦ったりして音を出すのを、もう片方でその音を聞くという遊び方でした。
それまで直接聴診だったものを、聴診器による診察を「間接聴診法」と名付け、ラエンネック医師は診察していきました。
しかし、自分で開発した聴診器によって自らの肺結核が発見され、45歳の若さで亡くなりました。
1855年にアメリカ人医師が両耳で聞けるように改良し、1926年にはアメリカのスプラーグが、現在の原型ともいえる聴診器を開発したのです。